稽古の録音こそ、いちばんの教材です

稽古、録音してますか?

もし先生が許してくださるならぜひ録らせてもらってください。稽古の録音が、いちばんの教材です。ほんとに。

きれいなCDとか、完成した音源を探している方、多いんですよね。でもわたしはいつも同じことを言っています。あなたに必要な音はあなたの稽古の中にあります。

稽古はあなたのために仕立てられたものです

稽古ってオーダーメイドなんです。その日のあなたの声、姿勢、手の形を見て言葉が選ばれています。

同じ曲でも言われることは人によって違います。だから既製品の音源をいくら聞いてもそこにあなたへの指摘は入っていません。

オーダーメイドの服を仕立ててもらっているのに既製品の写真ばかり眺める。録音を録らないというのは、それに近いと思いませんか?

CDや動画は何のために聞くのか

じゃあ完成した音源は要らないのかというと、そうではありません。役目が違うだけです。

稽古の録音自分を直すために聞く。毎日の地図です
名人の音源目指す方向を知るために聞く。細部を真似るためではありません
生の演奏いちばん情報量が多い。音の立ち上がり、間、会場の空気。録音には入りきりません

初心者のうちほど完成した音源を欲しがります。気持ちはめっちゃ分かる。でもそれは道順ではなくゴールを見ているようなものですよね。

道順は毎回の稽古で手渡されています。それを録って持ち帰って何度も聞いて紙に書き起こすこと。聞いてるだけだとやってる気になるのでなんでもいいから頭の外にデータを出してください。書くのがおすすめです。

記憶は驚くほどあてになりません

稽古の帰り道は「よし分かった」と思ってるんです。ところが家で楽器を持つと、半分も出てこない。

これ、誰でもそうです。わたしもそうです。

人の耳の記憶って数時間でずいぶん薄れます。節の上がり下がり、間の取り方、言葉の置き方。どれも繊細なものですから記憶だけで再現するのはマジで無理があります。

録音はその日の指摘を丸ごと持ち帰るための道具です。

どう使うか

その日のうちに一度通して聞く記憶が新しいうちに聞くと、言葉と音が結びつきます
指摘された箇所だけ繰り返し聞く全部を聞き直さなくて大丈夫。直す場所はたいてい数か所です
移動中に聞く電車の中でも歩きながらでもかまいません
次の稽古の前にもう一度「言われたことをやってきました」と見せられます

完璧にやろうとすると続きません。5分でも3行でもいいのでゼロにしないほうがずっと大事です。

録音を「聞ける耳」も育ちます

最初のうちは録音を聞いても何が違うのか分からないと思います。それで普通です。わたしも最初はそうでした。

ところが稽古で「ここが高い」「ここは走っている」と言われ続けているとだんだん自分でもその場所で引っかかるようになります。

聞き分ける耳は指摘と一緒に育ちます。だから分からないうちから聞いておく意味があるんです。

聞くときのコツをひとつ。全体を「上手い・下手」で聞かないでください。そう聞くと落ち込んで終わります。「ここの間が短い」「ここで息が足りてない」と、場所と理由で聞いてください。

  • 先生の声と自分の声を同じ箇所で聞き比べる
  • 歌だけ撥だけと分けて聞く
  • 直った箇所も確認する(できたことに気づかないと続きません)

自分の声を聞くのが嫌、という方へ

これ、ほんとによく聞きます。自分の声って自分がいちばん聞き慣れない音ですからね。気持ちは分かります。

ただはっきり書きます。自分の録音を聞かない方は、伸びません。

うまくいってない部分を見ないようにしているあいだは、直しようがないからです。最初はつらくても何度か聞いてるうちに慣れます。「ここが違うのか」と、だんだん分析できるようになる。

自分を責めるためではなく材料として聞いてください。

録音と録画は役目が違います

録音は音のため、録画は形のためです。

撥の角度、肘の位置、首の傾き、座り方。こういうのは音だけでは分かりません。自分では「まっすぐ座ってる」つもりでも映像を見ると傾いてたりします。

お家で稽古するときたまに自分で撮ってみてください。スマホを横に立てかけて全身が入るように。それだけで直すところがいくつも見つかります。

伝統芸能の稽古場って録画できないところがほとんどなんですよね。だからこそ、自分の稽古を自分で撮っておく値打ちがあります。

録音の道具について

スマホでも録れますが長く続けるなら小さなICレコーダーをおすすめします。

  • 1時間の稽古を毎回録るとスマホの容量はすぐいっぱいになります
  • 電池式のものが安心。充電を忘れて録れなかった、がいちばん悔しいので
  • 録ったら日付と曲名でフォルダを分けておくと、あとで探せます

うちの稽古の場合

わたしの門下では対面の稽古は録音していただいて大丈夫です。

オンラインの稽古は録画が残ります。Facebookの非公開グループに置いてあるのであとから見返せます。伝統芸能の稽古場で録画が残るところってまだ少ないと思います。

月に一度の全体稽古ではほかの方への指摘も聞けます。自分が言われてないことでも「いつか自分も言われること」が多いのでこれがめっちゃ効く。

個別の稽古と全体の稽古、そこに録音と録画。この組み合わせが、いまのところいちばん早いと感じています。

ひとつ、お願いがあります

稽古の録音はご自分のためだけに使ってください。

人に配ったり、インターネットに上げたりは絶対にしないでください。先生の声も指摘の言葉もその場のあなたのために出されたものです。

録音させていただけるのは、信頼があってのことです。その信頼が崩れたら「もう録音は禁止」ということになりかねません。それってあとから入ってくる人にとっても大きな損失じゃないですか?

演奏会の無断の録音・録画も同じです。出演者が会場を借りられなくなることがあります。どうかお気をつけください。

まとめ

  • 稽古はオーダーメイド。既製品の音源にあなたへの指摘は入っていない
  • 記憶はあてにならない。録音はその日の指摘を丸ごと持ち帰る道具
  • その日のうちに聞く/指摘された箇所だけ繰り返す/移動中に聞く/次の稽古の前にもう一度
  • 自分の声を聞くのが嫌でも材料として聞く。聞かない人は伸びません
  • 録音の可否は必ず先生に伺ってから

いちばん効く教材はもうあなたの手の中にあります🎶

ビワビワ。

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