

コツから入る人は、伸びません
たとえば営業の仕事で、一件も回っていない人が「契約を取るコツは何ですか」と聞いているとしたら、どう思われるでしょうか。 答えを聞いても、たぶん使えません。体感がないからです。 稽古も同じです。 何十回と繰り返して、はじめて「あ、こういうことか」と分かる瞬間が来ます。芸事でいう「身体で覚える」とは、そういうことだと思っています。 ですから最初は、効率を考えずにやってください。 削ぎ落とせるほど量をこなしてから、はじめて「どこを削るか」の話ができます。ただし、むやみに弾くだけでは上手くなりません
ここが大事なところです。 量は必要ですが、量だけでは上達しません。 上達は、この往復でできています。

最初のうちは、言われたとおりにやってみる
量をこなすときに、ひとつだけお願いしたいことがあります。 最初のうちは、言われたとおりにやってみてください。 指摘を受けたときに「でも」「わたしはこう思います」と返したくなる気持ちは、分かります。 社会で経験を積んでこられた方ほど、ご自身のやり方という引き出しをお持ちだからです。 ただ、琵琶のような伝統芸能は、その引き出しの外にあります。 いままでの経験で解決しようとすると、かえって遠回りになります。 自分を出すのは、ずっとあとの段階です。 はじめのうちは、言われたことだけを必死にやる。それだけで、一定のところまでは必ず行けます。「こうしたほうがいいのでは」と思ったときは、自分で勝手に変えずに、その場で先生に聞いてください。 聞くのは失礼ではありません。黙って我流に変えてしまうことのほうが、あとで困ります。
本番がなくても、稽古はします
稽古を本番前だけのものだと思っている方が、意外に多いです。 でも、本番の直前にやっても、もう遅いのです。 いい演奏というのは、その日に作るものではなく、積み上げてきたものが出るだけだからです。 普段できないことは、舞台でもできません。 逆に言えば、普段どおりにできれば、それでいいのです。 わたし自身は遅咲きのほうで、準備にとても時間がかかるたちです。 ですから、本番がない時期こそ淡々と稽古します。誰も見ていなくても、自分が見ていますから。 演奏会を減らしてでも、ちゃんと稽古をしてから舞台に立ちたい。そう思っています。では、どれくらいが「量」なのでしょう
よく聞かれるので、目安を書いておきます。 一度や二度さらった程度では、まず身につきません。 わたしは何十回という単位で繰り返します。弾けるようになってからも繰り返します。 と言っても、毎日何時間も確保できる方は少ないと思います。 ですので、短くてもいいので、毎日さわることをおすすめしています。楽器を持つ時間 5分でもかまいません。調弦をして、一節だけ。それで終わってもいいのです
耳を使う時間 自分の稽古の録音を聞く。これも立派な稽古です。移動中でもできます
人の演奏を聴く時間 演奏会に足を運ぶ。生の音の記憶は、あとから効いてきます
時間とお金の見通しが立たないうちは、突っ走らない
これも正直に書きます。 稽古に通う時間とお金を確保できないうちは、やる気だけでひとりで弾きまくるのはおすすめしません。
やる気ではなく、環境です
そのうえで、続けるコツをひとつだけ挙げるなら、やる気ではなく環境です。 人の意志は弱いものです。わたしもそうです。 ですから、やる気が出る日を待つのではなく、やらざるを得ない場所に、自分を置いてしまう。
・楽器をケースにしまわない。すぐ手に取れるところに立てておく
・「1曲やる」ではなく、一節だけ、5分だけと小分けにする
・見てもらう日を先に予定に入れる(稽古の予約が入っていれば、逃げられません)
・0か100かで考えない。5分でもゼロではありません
先生を選ぶときに、見てほしいこと
「指導者につきましょう」と書きましたので、選び方についても書いておきます。 わたし自身が、最初のころに分からなくて苦労したところです。
① ご自身が、定期的に稽古をしている人
教える側も、ずっと習い続けています。 自分が稽古していない人からは、稽古の仕方は出てきません。② 稽古場があり、日程が定期的に決まっている
先生のご都合で日程がまちまちになる教室は、初心者のうちは続けるのが難しくなります。 決まった場所で、決まった周期で開いていること。これは思っている以上に大事です。③ メソッド(やり方)を持っている
その日の気分で言うことが変わると、初心者は混乱します。 わたしがそうでした。何を信じて直せばいいのか分からず、ずいぶん長く迷いました。 自分のやり方を確立している先生についてください。④ できれば、いまも現役で演奏している人
教えることだけを仕事にしている方より、舞台に立ち続けている人から習うほうが、わたしはいいと思っています。 舞台でしか分からないことが、稽古の中身に入ってくるからです。⑤ 人前で弾く機会を、用意してくれる
発表会でも、小さな会でもかまいません。 人前で弾く日が決まっていると、稽古の質が変わります。 教えるからには、お弟子さんが人前で演奏する機会を定期的に用意するべきだと、わたしは考えています。 舞台に立つと、自分の現在地がはっきり分かります。うまくいかなかった日ほど、次の稽古が濃くなります。 また、ほかの人の稽古や演奏を見られる場があるかどうかも、見ておくとよいと思います。 自分への指摘だけでなく、人への指摘からも学べることはたくさんあります。ご参考までに、うちの場合
「では、水島さんの教室のはどうなってるのよ?」と思われるかもしれませんので、書いておきます。 わたしの教室は、いま新規のお弟子さんを取っていません。 その代わり、門人の稽古場があります。わたしが監修した教材と教え方で稽古をしているところです。 そちらで半年から1年ほど稽古を続けて、発表会にも出ていただいて——そのうえで「もっと続けたい」と思われた方は、わたしのところで習っていただけるようになります。 以前は全員対応していたのですが、やってみたいという方の数が多くて対応しきれないのと続く方のみに丹精込めてお教えしたいのでご理解いただけると幸いです。楽器は、最初から買わなくて大丈夫です
これは、はじめる前にいちばん心配される点だと思います。稽古場へは、手ぶらでお越しください 稽古場に琵琶を置いてあります。貸し出し代はいただきません。お持ちいただくのは撥と譜面だけ。撥も、お持ちでなければお貸しします。門下の稽古場も同じです
お家でも弾きたい方へ 琵琶・撥・ケースのフルセットを月5,000円でお貸ししています。持ち帰って、ご自宅で稽古していただけます
楽器を担いで通わなくて大丈夫です 混んだ電車で、慣れない大きな楽器を抱えて移動するのは、思っている以上に大変です。稽古場へは手ぶらで来て、お家では借りた琵琶で弾く。それでまったく問題ありません
続けた人にだけ、見える景色があります
最初の数年は、ほとんど横ばいに感じると思います。 やってもやっても変わらない気がして、つらい時期があるかもしれません。 でも、やり続けた人にだけ渡されるご褒美の瞬間は、必ず来ます。 そこから先は、見える世界が変わります✨ わたしの周りでも、残っているのは才能のある人ではなく、やめなかった人です。 才能ではなく、慣れです。できないところは、できるようになるまで慣れればいい。それだけのことです。 それは誰より才能がなく、ただ琵琶が好き!でひたすらもがいてきたわたしが証明済です(笑) わたしが死ぬほど得たかったことは本当にシンプルなことでした。 それを言語化して再現性があるように稽古をさせていただいてますので、音楽なんてやったことない!と思って心配している方こそどうぞ。 西洋音楽と全然ちがうので、先入観なくいらしたほうがかえってスムースにいくこともあります。まとめ
✔ コツは、量をこなしたあとに来る
✔ 量だけでは上達しない。指摘 → 反復 → また見てもらうの往復で伸びる
✔ 通う時間とお金の見通しが立たないうちは、ひとりで突っ走らない
✔ やる気ではなく環境をつくる。楽器はしまわない、小分けにする、見てもらう日を先に入れる
✔ 先生は「自分も稽古している/定期的に開いている/やり方を持っている/現役で弾いている」人を




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