琵琶を購入する際、盲点だったこと(琵琶の買い方補足)

 

こんにちは。薩摩琵琶の水島結子です。今日は「琵琶の買い方」について補足です。

 

自分はこれは普通だなと思っていたのですが、教えて来たり人から聞かれたりして

「おおう、ちょっと普通じゃないのかも」と思えたので、追記します🎵

 

以前書いた記事も参考にしてみてください

 

 

 

薩摩琵琶の買い方としては

・石田琵琶店で注文
・先生から譲ってもらう

がオススメだと以前書きました。
石田琵琶店は今ウエブサイトがあるので、そこから注文できるのですが、私が購入した20年以上前は先生にお願いして、来たものを買うという形でした。
また現在の師匠からお譲りいただいた際もですが…

その際の注意点は

「試奏するという概念がない」です。

 

試奏できないのが普通

いくつかから選んで買うというのは、同時期に門下から注文があって2面頼んだら2面来るので選べるケースのみだと思ったほうがいいです。
気に入らなくても、出来上がってきたものを買う、というのが普通でした。
私は毎回マイ琵琶が手に入ったことが嬉しくて、それになんの疑問も抱かずに職人さんや先生に感謝の気持ちでいっぱいでルンルン🎵で帰りましたが、そうじゃない方もいるのだなということを最近気づきました。

慣れというものは怖いものだなぁと…。

琵琶は職人も違うし、材質も違うので作っても個体差があるのが普通です。

「こういう音が欲しいなー」と思ったらまた別のものを買えばいいやとか、サワリを調整しよ~ともう琵琶を20数面以上買ってきて最近はあまり何とも思っていませんでしたが、大事なマイ琵琶第一号を迎える際は皆さん緊張するものですよね。

意を決してお金を貯めて買うのですから…!

 

残念ながら琵琶は大量生産ができないのと受注生産なので、ギターなど大量に楽器が飾ってあって、試し弾きできるジャンルのものではなく…頼んだけどやっぱりやめます、ができません💦
できたとしても信頼を失うと次から買えなくなってしまうかもしれないので、買う際は買うと決めてお金が貯まっている状態で買うようにするといいでしょう。

比較して選べないし、買い方指定されて堅苦しくていやだ!という気持ちも分かります…

私の場合はほかの楽器をやったのが、韓国のチャンゴやケンガリなどの伝統芸能楽器だったこともあり、受注生産が当たり前と思っていました。
チャンゴは韓国の両面太鼓なのですが、もちろん皮の種類で音が変わります。

犬の皮、牛の皮で音が違うのですが正直皮を胴体に直接張ってみないと分からない…。
胴が素晴らしければどの皮を張っても鳴るのは当然ですが、試しに叩くときの皮はつけっぱなしのたいしていい皮ではなく、皮は音が分からないのに別途購入…でした。

もちろん皮によってはあまり気に入らない音だなと、せっかく買ったのに使わなかった皮もあります。

(しかももうチャンゴもケンガリも手放してしまいました)

ケンガリは鐘なので試しにちょっと叩くことができましたが…

なので試奏の発想が私にはなかった~~!!💦

 

 

ちなみに子供の頃は親にピアノを購入してもらいましたが、親も音楽はわからないので先生にメーカーと型番を聞いて購入するという感じでした。
そう考えると先生の耳って大事ですよね~

 

 

楽器は見た目よりも音重視がおすすめ

私はとにかく材質(鹿児島の桑)と音重視で、最初は弾きにくくても身体が慣れていくのを知っているので最初の違和感(今借りているものだったり、使っている楽器と違う感じ)があっても大丈夫だよ~と考えています。

いつも同じ楽器を弾いている人は、ほかの楽器を弾いたときに出る違和感が気になるかもしれませんが、いろんな楽器を触ってみると
個体差があるものなんだなということがわかりますよ。
なので、「なんかこの楽器、いつものと違うから弾きにくくて買いたくないかも!」という違和感があっても、すぐに慣れますのでご安心を!✨

 

どうしても試奏したい人が中古楽器店にいった際の注意点

とりあえず事情は分かったけど、どうしても音や弾き方を確認して購入したいと思うのは当たり前ですよね。
今や一般的な楽器屋にいけば弾かせてくれることがほとんどです。
中古楽器店でたまに琵琶を弾かせてくれるところがありますが、先生から買う…以外で注意していただきたいことは、
「楽器が曲がっていないかを確認する」ということ。

 

 

楽器が曲がってるって何?


琵琶のネックは長くて細いので、長い間横にしておくと、首が曲がってしまうことがほとんどです。
遺品などを倉庫に放置していたりした場合、100パーセント曲がっています。(だから家ではギタースタンドか琵琶立てに立てかけて保存してください)
管理方法が悪いと、どんなに名匠の総桑製のものであってもすごく弾きにくい。というかきちんとしたフォームで弾いても撥が狙った位置に当たらないので、フォームを崩して弾くことになります。

そうすると、せっかくフォームを綺麗に弾くように稽古していても、その琵琶に合せて間違った身体の使い方をするようになり、正しい身体の使い方がどんどん分からなくなるという本末転倒なことが起こります。
頸が曲がった琵琶は柱がまっすぐついていない場合がほとんどですが、素人が見ても分かりません。
ヤフーオークションやメルカリ、中古楽器店の写真を見ても大抵曲がっています💦
もし自分が見分ける目がないとしたら、先生に聞くなどをしてからの購入をおすすめします。

 

うちのお弟子さんで頸が曲がった楽器をメルカリで購入してしまって修理した方がいますが、曲がっている頸に対して傾いた柱を1つずつ作ってもらったので手間と修理代がかなりかかりました💦
うちのお弟子さんだから修理お願いしましたが断られることも多いので注意してください。

ちなみに石田琵琶店ではなく知人にお願いしており、どの琵琶店でも直るわけではないのでお気をつけて!

中古品は傷や割れが気になるから新品がいい!という場合

この場合は石田琵琶店に依頼する一択になります。
ただ、薩摩琵琶の材質に関しては鹿児島の桑が最高です。
現在新品で作った場合は外国製の桑製になりますので、色も黄色っぽいものが多いです。
鹿児島の桑はどーんと年輪も大きく、古いものは黒っぽくなっているものが多いので、人によっては「汚れてる?なんか汚くない?」という人がたまにいます。
それが鹿児島の桑の色なんです(笑)

 

私のこの楽器も、縦に大きく亀裂が入っていましたが、明治・大正期の名匠・林宇助の作品なので割れなんて埋めればいいわ!と割れてるうえに、まだ音が分からない状態で購入させていただいたものなのですが、「よく割れてるのに買うよね~」と言われます。

 

でもね!!

 

いい楽器は薄く繊細に作られているので、一度くらい割れます(特に表板)。
うちの師匠の楽器も2面くらい割れてますし、修理の跡がたくさんあります。
割れよりも音!な人は割れくらいでひるまないほうがいいと個人的には思います。

 

もし割れているのが気になるなら(桑の粉を削ったものと漆を混ぜて塞げば完璧に塞げます)、漆を塗ってしまえば全く新品のように美しくなります。
私の林宇助も黒い漆をかけているので、割れているのが全くわかりません。
確かにお金はかかりますが、芸術品を常に弾いているのもいいものだなぁと思いながら大事に弾かせてもらっています。

 

どうしても琵琶を買わないといけないか?

楽器に関しては、個人のお金の考え方によるところが大きいと思いますので、自分が買えない時期は無理して買わなくてもいいと思っています。
そのためにレンタル制度を設けているので、ご自身の教室でレンタルがある場合はありがたく利用させてもらうのもひとつの手です。
ただ、一度購入をしたいとお願いしたうえでキャンセルをしてしまうと先生自身が負担して補填したりしなくてはならないことを考えていただければと思います。

 

私個人としてはいいマイ琵琶を持つと、楽器が背中をおして上手くなると思っていますのでマイ琵琶を推奨したいですが、金銭的に難しい人には無理強いするつもりは全くありません。

ただ、今すぐ自分が楽器を買えないからって「高い楽器でマウント取ってくる」とか「お金がない奴はやるなっていってるんだろ!」みたいに卑屈にとらえてほしくないなと思います。
それは楽器を買うことを第一優先にして頑張って買った人、何においても自分が今やりたい楽器を買うんだと頑張って買った人に失礼だからです。

人にはそれぞれ生活がありますし、優先順位があります。
食べていくのも難しい人が楽器を買うのは、物理的に無理なのでまずは生活を安定させてからやるのがいいというだけです。

自分のお金に対するブロックは、他人の経済状況をひがむことで解決することではありません。
じゃあどうしたら買えるか、どうしたら楽しい未来が待っているかを考えて購入されるといいなと思います。

 

ちなみに私はここ数年前まで、教室をやるために楽器を沢山購入したり衣装を買うことに必死だったので、自分に対してほとんどお金を使えませんでしたし、琵琶のため以外にお金を使うブロックが大きすぎて高級レストランや旅行なんてもってのほか、ブランドものすら持っていませんでした。
だけど琵琶を第一優先にしていたので、楽器が増えていくのが幸せでした。

 

 

 

これからも琵琶を後世につなぐために私ができること

 

ざーっと書いてみましたが、こんなめんどくさい買い方しかないんじゃ、廃れるよ!って思いましたよね。
私も思いましたし、なんとかしたいな~と思います。
でも修理や製作を開始してから最後に音をつけるので、実際に注文してからでない限り買うのが難しいのは、ご理解いただけると嬉しいです。

 

もう少し琵琶をやっている人が増えれば、作り置きみたいなのもできると思うのですが…
やっぱりやっている人が少ないジャンルは色々課題があります。
職人がいないこと、修理を頼めるところが限られていること…など。

それに負けず、琵琶をやってみて琵琶を自分の軸にして生きる人が一人でも増えるよう、色々試していきたいと考えています。

私自身、たくさんのことに手をだしているなーと思われてると思いますが、何が正解かはやってみなくては分かりません。

誰もやったことがないので、これをしたら正解!というものがとにかく分からないのです。

 

ライバーも初めはすごく批判されましたし、実際に匿名でクレームを言われたこともあります。(伝統芸能者がはしたない!的な)

でも、琵琶を全く知らなかった人がライブ配信で琵琶を知ることになり、応援してくれるようになりました。

新規で若いお客さんがたくさん私の演奏会に足を運んでくれるようになったこと、私を通して琵琶を知り、ほかの人の演奏も聞いてみたよと言ってくれる人が増えたこと、それは失敗と言えるでしょうか?

 

なにが正解だか分からず、失敗したら「ダサッ!」「ほらみろ」と思われるかもしれません。

でも挑戦しない限りなにが当たるかは分からないんです。

 

これからもダサいかもしれませんが、いろんなことに挑戦して琵琶を知っていただこうと思っています。

琵琶については買い方を含め、色々分からないことがあると思うのでまた気づいたら書きます~

 

ビワビワ!

 

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